研究紹介:メタマテリアル
今日から順に小林研でやっている研究についてご紹介します!
私は「メタマテリアル」という、不思議な性質を示す人工媒体についての研究をしています。
メタマテリアルは、あの「魔法の透明マント」を叶えるとも考えられている(!)、
今最も注目されている研究の一つです。
面白い内容はたくさんありますが、今回は
①メタマテリアルのもつ不思議な性質(負の屈折)
②メタマテリアルの応用例
についてお話します!
一見、応用物理的な研究に見えますが、
後述するように、災害に役に立つ応用や小林研らしく宇宙への応用の研究も考えられています。
そもそも、「メタマテリアル」の「メタ」というのは、「超越した」という意味を持ちます。
すなわち、一般的なマテリアル(物質)を超越した性質を持つものとして名づけられました。
ではどのような「超越した」性質を持つのでしょうか?
今回は代表的な性質について紹介します。
**性質**************************************
まず、以下の写真を見てください。
このように、水の入ったコップの中のお箸は曲がって見えてしまいます。
これは「光の屈折」から起こる現象です。
空気中から、水のような媒質に入った光は、折れ曲がって進みます。
入射する角度と屈折する角度の比で表される屈折の度合いを示すものを
「屈折率」といいます。そして、一般の媒質では水と同じように、図のように曲がります。
このような状態は「屈折率が正」の場合に見られます。
つぎに、こんな現象を考えてみます。
このような現象は、屈折角が負になるため、「屈折率が負」である場合に成り立ちますが、
屈折率が負になる媒質は実は、自然界には存在しません。
光の屈折率(n)の定義は以下のようになっています。
誘電率や透磁率は、電場と磁場の進みやすさを決める媒質特有の物理量です。
ルートがついているため、誘電率や透磁率はともに正であれば屈折率は正になります。
このままでは負の屈折率は得られません!
しかし、屈折率の定義を以下のように変更してみると、
誘電率、透磁率がともに負(マイナス)であった場合、各々純虚数「i」となります。
「i × i=-1」であるため、屈折率は負にすることが可能です。
したがって、図2の現象は、誘電率や透磁率を負にする媒質があれば成り立つと考えられました。(Veselago,1968)
一般的に、金属の誘電率は負になっています。
しかし、透磁率が負になるような媒質は自然界には存在しません。
したがって、屈折率が負の媒質は存在しないと考えられていました・・・
が!
1998年Pendryらは、そのような媒質を人工的に作ることに成功しました!!
彼らは、その人工媒体を「メタマテリアル」と名付けました。
その考えられたメタマテリアルのイメージ図は以下のようなものです。
ずいぶん「物質」とはかけ離れて見えますが、
この金属のリング一つ一つは電磁波(光)の波長と比べて、
だいたい10分の1程度の大きさです。
私たちが皮膚の細胞一つ一つを肉眼では一様な皮膚としか観察できないように、電磁波も
自分よりも十分小さいサイズの構造体は、水などと同じように一様な物質と認識します。
この金属のリングを置くと、振動数によっては入射した電磁波とリング内に発生する電磁波が「共振」します。共振は、ブランコで体験できる現象です。
ブランコに乗っている人と、押す人がいたとき、押す人のタイミングが上手だと
ブランコは大きく揺れます。(振幅が大きくなる) これが共振です。
同じように、リング内に発生する電磁波と入射した電磁波のタイミングがうまく合えば、普段よりも大きく揺れる現象が見られます。
反対に、ブランコを押す人のタイミングが下手な場合は、
(これは実際にブランコで再現するのは難しいですが、)
ブランコは押された方向と逆方向に揺れる現象が見られます。
メタマテリアルはこの現象を利用し、リングで発生する電磁波と入射した電磁波のタイミングをわざとずらして、反対向きの波をメタマテリアル内に発生させます。
これによって、透磁率も負にすることが可能になり、負の屈折率が実現されます。
さて、これを応用して様々なものが実現されていますが、
それはまた「メタマテリアル応用編」としてご紹介できたらと思います!
長くなってしまいましたが、メタマテリアルの簡単な研究紹介でした。
最後までお読みいただいた方、ありがとうございました!
次回は、ブラックホールの研究を紹介します!お楽しみに!
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